「小さな自然再生」は、自分たちで汗をかいた効果が実感できる、楽しく充実した取り組みです。しかし、気をつけなければならない点も少なくありません。河川や水路には管理者や利害関係者の方々がいます。小さな自然再生への情熱に加えて、関係者の理解と協力を得ることで、安心して活動に取り組むことができます。
1.川や水路の管理者はだれか? 〜行政や関係者の支持を得るために〜
取り組みを長く続けるための秘訣は、河川や水路の管理者との良好な関係を築くことです。最初に、川や水路で何かを取り組みたい人が知っておくべきことは、河川管理の責任者とその役割分担は法律で定められているということです。例えば川を横断して設けられている取水堰や橋にも、それぞれ管理者がいます。農業用水の取水堰は、用水組合が管理していることもあります。
そこで、これら管理者に一緒に取り組んでもらえるかどうかによって、大きな違いが出てきます。自分たちの取組みが自然環境の再生だけでなく、教育やまちづくり、防災意識などの様々な方面で地域にとってプラスになることをアピールしながら、行政が進める様々な事業や施策を追い風にしていくこと、更には漁業協同組合や土地改良区組合などの関係者の方々にも応援してもらえる状況になれば、管理者の協力もより得やすくなります。
2.川で小さな自然再生に取り組む際の留意点
(1)洪水の流れを邪魔しないか
川の中にコンクリートブロックや木材などを置いたり、川の中の地形を変えることは河川管理者や地元の方々が最も心配することです。取り組みにあたっては、大きな洪水のときには流されて邪魔しないことを事前に説明しておくことが大切です。
(2)洪水で流されたとしても大丈夫か
大規模な洪水に耐えるだけの丈夫で頑丈なものづくりが正解とは限らず、自然の素材をつかって、流されることを前提とした方法も現実的な対応です。しかし、流されたモノが思わぬところで被害を及ぼさないこと、ゴミとなって景観を乱さない、回収しやすい工夫も必要です。
(3)施設(護岸や堤防など)に害がないか
取り組みの結果、護岸や堤防に損傷を与えないことがないかを注意しましょう。
(4)河川景観への配慮
小さな自然再生で導入する構造物は、出来る限り河川の自然景観にとけ込むようなものとなるように心がけましょう。
(5)メンテナンスは誰がやるのか
小さな自然再生は、自分たちでメンテナンスすることが前提となります。定期的なメンテナンスをいつ誰がどうやってするのかを予め計画しておきましょう。
(6)作業する際に、水質事故やひどい濁水をおこさないか
川を濁らせると、下流で取水している用水の関係者や、漁協や釣り人、地域住民にご迷惑を掛けることもありますので十分に配慮しましょう。
(7)漁協や地域住民との調整は大丈夫か
多くの河川では、漁業権を持つ漁協組合員の方々にとってその河川が自分たちの暮らしを支える場所となりますので、河川管理者と相談しながら、地元漁協や周辺住民の同意をあらかじめ得ておくことが大切です。
(8)安全管理を怠らず
現場で怪我をしたり事故が起こっては、せっかくの活動が台無しになってしまいます。現場作業に先立っては、装備、お天気、怪我人や急病人が出た時の対応、作業に潜む危険の相互確認など、安全確保を怠ってはいけません。