根固めブロックを並べかえてつくる逆転発想の魚道づくり

Profile岐阜県 / 天神川
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普段は「お堅い」公共工事の設計施工をしている技術者を中心としたメンバーが、頭をやわらかくしながら「小さな自然再生」に取り組みました。岐阜県には、産学民官の協働で、主に公共事業分野での自然環境保全に取り組む「岐阜県自然共生工法研究会」があります。研究会に発足した「小さな自然再生」に取り組むワーキンググループの活動で、高さが1.3 mある落差工の解消に挑みました。

経緯・目的

  • 「小さな自然再生」が行われてきた川に残された課題

天神川では改修以前から地元活動団体が熱心に活動しており、河川管理者の協力を得ながら「小さな自然再生」的な取り組みを進めてきていました。簡易魚道の設置を行った落差工は、落差が1.3 mあり、活動団体の力ではどうにもできず、河川管理者に改善要望の出されていた箇所でした。河川管理者側でも対応を検討していたものの、上流側に未改修区間を残している状態で、魚道等の整備にあまり積極的になれない状況でした。また、深く掘り下げられた川で進入路もなく、工事も簡単でないということもその一つの理由でした。

  • 岐阜県版「小さな自然再生」のテストケースとしてトライ

岐阜県には、産学民官の協働を目的として設立された任意団体(岐阜県自然共生工法研究会)があり、設立10周年を記念した新たな取り組みとして「小さな自然再生」への取組みを模索していました。活動団体のリーダーの方から、この場所のことを聞いたメンバーが会に提案し、テストケースとして落差解消に取り組むことにしました。また、注目度の高い市街地の河川であり、地元活動団体の協力も得られやすい状況であったことから、取り組みました。

  • ワークショップスタイルと、有志による検討を重ねて

研究会の活動ということで、会員に対して参加を呼び掛け、ワークショップスタイルで現地検討を重ねる方法を採用しました。また、事前調査、事後モニタリングを前提とした取り組みとして計画しました。研究会のリーダーが進め方を検討し、参加者への連絡等は、研究会の事務局が行いました。

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活動の流れ

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工法の説明・工夫した点

  • 重厚長大な工法から発想を転換、無駄をそぎ落とす!

検討に参加したメンバーは、主に公共事業に関わる土木技術者であるため、工法の検討の当初の段階では、大掛かりな改修を要するアイデアが多く出されました。その後の話し合いの中で公共工事に対する先入観を捨て、既設の根固ブロックを再配置して、その隙間に魚道を形成するアイデアが生まれました。

  • 河川管理者発注工事と有志による手作業の役割分担

出水時の流れが激しい場所であるため、魚道の土台はコンクリートで固めることにしました。そこで、人力作業では無理な根固めブロックの移動と魚道の土台作りは、河川管理者で工事してもらい、魚道の仕上げは会員有志メンバーで手作業で行うことにしました。河川管理者には柔軟に対応していただいた結果、実現できました。

  • 身近な材料を用いた「見試し」で魚道隔壁を検討

魚道の隔壁高さ、越流部の形状等を検討するため、コンクリートレンガと粘土を使って魚道隔壁を試作し、水を流して比較検討を行いました。実際に魚を入れて、行動を観察しました。その結果、隔壁高さと形状を見直すことになりました。手直しがきく方法で、現場で試してみることは、効果的な手段であることを実感。

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使用材料・工具

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実施体制・スキーム

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研究会行事として、参加者を公募する現地検討会を基本に進めました。参加者は、研究会会員で民間の土木技術者が主体。河川管理者には、事前に相談の上、現地検討会にはオブザーバーとして参加してもらえました。コンサルタント技術者、メーカー技術者等による有志メンバーで最終案をまとめ、河川管理者に提出。人力作業困難な魚道の土台部分は、県が維持修繕業務を契約している建設業者が施工。魚道隔壁は、後日現地検討会にて検討した後、河川管理者立会のもと、有志にて人力施工。地元活動団体を中心に、効果をモニタリングしています。

現場のキーパーソン

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効果

【一次的効果】

  • 平日でも放課後には子どもたちがタモ網をもってウロウロしているような川であり、子どもたちから情報が入り始めています。
  • 魚道の下流端、上流端にはまだ改良が必要という認識であったのですが、少し流量が増えた状況では、オイカワ等が盛んに遡上する状況が確認されています。
  • 改修以前にはイシガメが産卵のために上がっていた場所であったという地元の方のお話を伺い、魚道の対象は魚類だけでなく、カメなどの匍匐型の生きものも遡上可能であるように、スロープ部を設けました。設置後、イシガメが魚道を這い上がっていたとの目撃情報が寄せられています。
  • 出水時の流れが非常に激しいところであることは地元の方から伺っていました。完成後、何度か出水を受けましたが、魚道の破損はみられません。ただし、土砂がたまってきており、魚道が埋まるほどになってしまった場合は、メンテナンスは必要と考えられます。
  • 普段から川遊びしている地元の子どもたちに、魚道の管理(土砂やゴミの撤去など)を川遊びしながらやってもらえないか、地元活動団体の方と相談しています。

 【二次的効果】

  • 地元住民の注目度が非常に高まり、川を覗き込む人が増えています。
  • 日頃川遊びしている子どもたちが、魚道を遊び場にしています。
  • 関わったメンバーの天神川に対する愛着が増しました。また、メンバーの多くが魚道の様子をたびたび見に来ています。
  • 関わったメンバー(河川管理者含む)の連帯感、信頼関係が高まったように感じられます。

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